アニメやスマホゲーム『ウマ娘プリティーダービー』のおかげで、競馬業界が盛り上がっていますね。
ウマ娘には、多くが史実になった競走馬が元ネタになっています。その元ネタの競走馬を、ウマ娘のエピソードと交えながら、まとめます。
出展:JRA-VAN
今回は、”短距離界に咲いた小さな韋駄天娘”
ニシノフラワーです。
Contents
生誕日:1989年4月19日
性別:牝馬
毛色:黒鹿毛
父親:Majestic Light
母親: デュプリシト
生産者:西山牧場
馬主: 西山正行
調教師:松田正弘
デビュー:1991年7月7日
最終レース:1993年12月19日
生涯成績:16戦7勝(7.1.3.5)
獲得賞金:4億6970万6600円
特徴:
1200m~1600m得意の短距離馬
基本的に先行策
420㎏と小さな馬体
2022年4月12日に、ニシノフラワーが、ウマ娘プリティーダービーで、新たに育成実装されたということで、大変話題になりました。
身長135㎝と非常に小柄な女の子の設定になっていますが、それは元ネタの競走馬ニシノフラワーも小柄なお馬さんだったからです。
ニシノフラワーの馬体重は420㎏ほど、平均馬体重は480㎏ほどなので、一回り馬体が小さいのです。それでいて、短距離路線で、牝馬戦のみならず、牡馬や古馬相手にも、パワフルな走りで戦いを挑んだ韋駄天娘でもあるのです。
母親デュプリシトの父親Danzigが、世界的に優秀な種牡馬。北米を中心に欧州や日本でも活躍馬を輩出しています。全体的にスプリンターが多く、日本馬ではアグネスワールドやビコーペガサスが有名です。
また、母系の祖母にあたるザブライドは、大種牡馬サーゲイロードの半妹であり、アメリカ3冠馬セクレタリアトの全姉にあたります。その半姉の5代後の子孫に、短距離馬史上最強の1頭ロードカナリアがいます。母系は、牝馬スプリンターの血統が色濃く流れています。
父親Majestic Lightは、アメリカでクラシック2冠を含む、4度GⅠを制覇している名馬。種牡馬としては、全般的に牝馬で活躍馬を輩出していました。
つまり、牝馬が強くなる父の血統と、強力な牝馬スプリンターを生み出す母の血統を色濃く受け継いだのがニシノフラワーになります。
ニシノフラワーは、西山牧場で生産されました。西山牧場は、1970年代を中心に社台グループに次ぐ、第2位の規模を持つ生産牧場でした。ですが、開業20年以上GⅠ馬を輩出できず、経営難に陥っていました。
そこで、生産・育成各部門の改革に着手します。1989年2月に2億円規模の資金を投入し、アメリカより4頭の受胎済み繁殖牝馬を輸入しました。そのうちの1頭に、既にニシノフラワーを受胎していたデュプリシトがいました。いわゆる”持込馬”でした。
そのような事情があり、生まれたニシノフラワーは、かなり期待を受けながら育ちます。ですが、小柄で細身な馬体で、調教でも目立たなかったため、いくつかの厩舎から、入厩を断られてしまいます。
最終的に、栗東の松田厩舎に決まりますが、松田調教師も「脚ばかりヒョロっと長い」「バンビみたいな馬」と好印象ではなかったそうです。
1991年7月にデビュー戦が決まりました。骨膜炎を発症しており、脚の負担が少ないとされるダート戦が組まれました。
デビュー戦は4番人気でしたが、中盤から一気に抜け出して、そのまま先頭でゴール。4馬身差の完勝で、いきなり新馬戦を勝ち上がります。
2戦目は、いきなり重賞レースとなる札幌3歳Sを選択。ここも4番人気となりますが、道中は2番手を追走します。直線で先頭に立つと、後続に3馬身差をつけて優勝!
重賞初勝利、さらに鞍上の佐藤騎手はデビュー22年目で、嬉しい重賞初制覇となりました。これには松田調教師も、ニシノフラワーの素質を認めることになりました。
放牧に出された後、3戦目はGⅡレースに。佐藤騎手が騎乗停止中だったため、トップジョッキーの一人である田原騎手を鞍上に迎えます。
1番人気で出走、今回も道中で抜け出し3馬身半の差をつけて圧勝します。3戦とも、2着馬を突き放しているのが凄いですね。
佐藤騎手に戻った4戦目は、ついにGⅠレース(阪神3歳牝馬S)を迎えます。これまでの戦績が評価され、1番人気でした。
参照サイト:JRA公式チャンネル
序盤から内側を突き、3番手付近に浮上。第4コーナーを終えたあたりで2番手に付けます。残り200mを切ってから先頭に立つと、追ってきたサンエイサンキューやシンコウラブリイを寄せ付けず、見事に優勝!GⅠ初挑戦初優勝を飾ります。
しかも、西山牧場開業25年目で初のGⅠ馬、さらに佐藤騎手にとっても初のGⅠ制覇。記録尽くしでした。勿論、最優秀3歳牝馬にも選出されています。
1992年年明け初戦は、チューリップ賞が選ばれました。GⅠ馬が出走することもあり、単勝1.2倍の圧勝人気でした。
でしたが、まさかの2着。佐藤騎手の判断で、第3コーナーでの仕掛けを遅らせた結果、最終コーナー出口で馬群に包まれる展開になってしまいます。
何とか大外に持ち出して強襲をするも、阪神3歳牝馬S9着だったアドラーブルに3馬身差半及ばず、2着に敗れます。ニシノフラワーにとっては、初の敗戦となりました。
続くは、クラシック1戦目桜花賞。佐藤騎手は、自信喪失状態で、ニシノフラワーから自ら辞退を申し出ることに。その佐藤騎手の勧めで、鞍上に牝馬戦に強い河内洋騎手を迎えて挑むことに。
ファンも「前走は騎乗ミスが大きかった」と、オッズ2.3倍ながら、1番人気に支持します。
参照サイト:JRA公式チャンネル
道中は5番手付近から、第3コーナーで早くも2番手に進出。第4コーナー出口付近で先頭争いを繰り広げると、残り200mの坂で一気に抜け出してきます。
後方から、前走で敗れたアドラーブルが追走してきますが、3馬身半差をつけて完勝します。GⅠ2勝目、そしてクラシック牝馬1冠目を獲得しました。河内騎手は桜花賞4度目の制覇ですが、最もプレッシャーが高かったと語っています。
続いて、クラシック2冠目優駿牝馬の頂きに挑みます。2400mと距離が一気に伸びるため、血統的には短中距離のニシノフラワーには、スタミナ面の強化が必要でした。
でしたが、疲れが出たのか食が細くなってしまいます。強い調教が出来ず、調子は下降気味のまま挑むことになりました。
道中河内騎手との折り合いを欠いた状態でレースは進みました。最終コーナー出口で一旦は先頭に立ったものの、そこから伸びを欠き7着に後退してしまいまいた。優勝はくしくも、これまで争っていたアドラーブルでした。
夏の休養を経て、体調面は回復。秋初戦はローズSを選択。1番人気に支持されるも、4着に敗れます。今回も最後の直線で失速するレースで、距離が壁になってきます。
次走のエリザベス女王杯は、優駿牝馬と同じく2400m。厳しいと感じた河内騎手は、これまでの先行策と違い、後方待機でスタミナを温存する差しのレースをします。
最終コーナー出口まで中盤に控えると、溜めていた末脚を繰り出し、内側から3着まで伸びてゴールします。ようやく光が見えましたが、勝ち馬とは4馬身近く離されており、限界を感じたのも事実でした。
ここで陣営は、短距離路線にシフト。当時12月施行のスプリンターズSに参戦を表明しました。
とはいえ、ライバルも強力。安田記念を制したヤマニンゼファー、直前のマイルCSを制したダイタクヘリオス、また翌年才能開花させるサクラバクシンオーも参加していて激戦必至でした。なお、オッズはダイタクヘリオスに次いで2番人気でした。
参照サイト:JRA公式チャンネル
レースは、サクラバクシンオーを中心に高速レースに。今回も河内騎手は後方待機策、後方集団でレースを進めます。最終コーナー出口で大外に持ち出すと、残り200mから一気に追撃を開始、
先頭はヤマニンゼファーが逃げ切り体制に入っていましたが、ニシノフラワーの豪脚が襲い掛かります。ゴール版直前で差し切り見事に優勝!短距離として、珍しい後方待機策の優勝は、韋駄天娘の伝説として語り継がれています。
なお、桜花賞とスプリンターズSのGⅠ2レースを制したニシノフラワーは、最優秀4歳牝馬と最優秀スプリンターにも輝きました。
1993年も短中距離路線で現役続行します。GⅡのマイラーズCから始動、ヤマニンゼファーとの再戦となります。今度は先行策とり、直線で抜け出し押し切るレースで完勝。2着ヤマニンゼファーとも3馬身半差をつけていました。
続いて、GⅠレース安田記念を選択します。前年覇者ヤマニンゼファーを差し置いての1番人気に支持されます。前走のように、得意の先行策で優位にレースを進めます。
ところが第3コーナーからいつものような伸びが無く、むしろ後退。そのまま優勝争いに加わることなく、過去最低の10着に敗れます。なお、優勝はヤマニンゼファーでした。
ここから、かつての豪脚が影を潜めます。ファン投票で選ばれた宝塚記念では8着に終わります。
秋は、GⅡのスワンSから始動。格が落ちたこのレースでは、接戦の末3着に食い込みますが、GⅠマイルCSでは、ついていくのが精いっぱい。13着と惨敗します。韋駄天娘が、鳴りを潜めました。
そして、迎えるは、連覇がかかるスプリンターズS。不振が続いていましたが、3番人気の支持。ファンは韋駄天娘を信じていました。そして、ニシノフラワーは…その期待に応えます。
中団で控えると、コーナーで大外へ。まるで昨年を再現するかのような展開、そして直線で懸命に追い込んで、順位を上げていきます。
結果、本格化していたサクラバクシンオーと、この年2冠のヤマニンゼファーには及びませんでしたが3着。前年覇者として、プライドを見せる走りをしました。
ニシノフラワーは、このレースを最後に引退。西山牧場で繁殖牝馬となります。
繁殖牝馬としては、11頭の仔を孕んでいます。重賞勝利こそないものの、複数勝利や重賞レースで2位になる競走馬を輩出。年に1頭しか孕めないことを考えると、優れた成績と言えます。
そして2020年2月5日午前10時に老衰のため逝去。31歳と競走馬としては、非常に長生きでした。
そんな中、ウマ娘プリティーダービーで注目を集めているのは、セイウンスカイとの関係です。
セイウンスカイは、ニシノフラワーと同じ馬主の西山氏。1998年クラシック2冠で、種牡馬になってからニシノフラワーと交配を行っています。生まれた牝馬ニシノミライの血統であるニシノデイジーが重賞制覇!
出展:ウマ娘攻略wiki
そのためか、ウマ娘プリティーダービー内では、セイウンスカイとニシノフラワーの仲睦まじい姿が。なお、ニシノフラワー育成すると、セイウンスカイが嫉妬する描写もあったり、サイゲ細かいです(笑)
さらに、西山オーナーの娘さんが、ゲームウマ娘プリティーダービーにハマっているそうで。そして、先日のニシノフラワー実装で、おめでとうと祝福したTwitterがバズって驚いているそうです。
一部の信者と色々あったそうですが、30年前の桜花賞馬がこれだけ注目される。オーナーにとっても、嬉しいことだったのではないでしょうか。ニシノフラワーはまだまだ話題になりそうです!
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